2025年11月17日、ブラジル・ベレンで開催中のCOP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)において、韓国政府は「脱石炭連盟(PPCA: Powering Past Coal Alliance)」へ加盟し、既存の61基の石炭火力発電所のうち、40基の石炭火力を2040年までに段階的に廃止することを正式に表明しました。

アジアの主要経済国であり、石炭火力発電設備容量で世界第7位に位置する韓国のこの決定は、世界の気候変動対策における大きな一歩として注目されています。

韓国の石炭火力廃止目標

韓国は、石炭火力発電の段階的な廃止に関して、以下の具体的な目標を設定しました。

  • 新規建設の停止: 今後、石炭火力発電所の新設は行いません。
  • 既存発電所の廃止計画
    • 既存の61基の石炭火力発電所のうち40基を2040年までに段階的に廃止します。
    • 残る21基についても、2026年中に閉鎖に向けた計画を策定する方針です。

韓国は、中国、インド、日本に次いで世界第4位の一般炭(発電用石炭)輸入国であり、2023年時点では国内CO2排出量の半分近い49%を石炭火力が占めるなど、火力発電への依存度が高い状況にあります。PPCAは、石炭のほぼすべてを輸入に頼る韓国が石炭火力を段階的に廃止することで、エネルギー輸入費において数十億ドルを節約できると指摘しています。

韓国のキム・ソンファン環境相は、「石炭からクリーンエネルギーへの転換は、気候変動対策に不可欠であるだけでなく、エネルギー安全保障の強化や企業競争力の向上、数千人の雇用創出にも寄与する」と述べています。

韓国政府は10月に、これまで「脱炭素」として推進してきた石炭火力でのアンモニア混焼についても見直すことを表明しました。

また、韓国では今年8月、気候変動による農作物への被害を理由に、農民が国営電力会社のKEPCOを提訴しています。原告の農民たちは、石炭などの化石燃料への依存が気候変動を加速させ、農作物に損害を与えていると主張しており、政府に対して、2040年の目標を前倒しして2035年までに石炭火力発電所を段階的に廃止することも求めています。

PPCAと日本の国際的な立ち位置

「脱石炭連盟(PPCA)」は、石炭火力発電の段階的な廃止を目指す国際的な枠組みであり、世界60カ国と120の地方自治体・企業等団体で構成されています。韓国が加盟を表明した11月17日には、バーレーンも加盟を表明しました。

PPCAには米国も加盟しています。日本は主要7カ国(G7)で唯一、政府としてPPCAに加盟しておらず、日本から連盟に加盟しているのは地方自治体である京都市のみとなっています。韓国のPPCA加盟により、G7各国が石炭火力廃止に向けた国際的な枠組みに参加する中で、日本政府の「不参加」という姿勢が改めて際立つことになりました。

今回の韓国のPPCA加盟は、アジア地域における日本の「脱石炭」への消極的な姿勢をさらに際立たせ、国際社会からの批判や、気候変動対策への貢献に関する圧力が一段と高まることを意味します。GENESIS松島計画のような石炭火力の延命計画は、国際的な信頼を失うだけでなく、気候変動リスクと座礁資産化のリスクを高める、時代遅れの政策として見直されるべき時期に来ています。

参考

韓国の加盟についてのPPCAのプレスリリース(英語)

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