2025年11月23~25日にかけて、「松島火力発電所感謝デー」(2025年11月24日)で行われていた発電所内部の見学ツアーへの参加と、西海市役所(11月25日)で地域産業やエネルギー関連に関わる担当者の方々からお話を伺うことが出来ましたのでご紹介します。
松島火力発電所見学
J-Powerの保有する石炭火力発電所の多くは年に一度、今回の松島火力発電所感謝デーのような開放イベントで見学ツアーが実施されています。

現在、松島火力発電所の1号機は既に廃止、2号機はGENESIS松島計画への移行を踏まえて休止となっています。見学ツアーでは2班に分けられた参加者が、それぞれ1号機と2号機内を見学しました。我々は1号機のタービン建屋を見た後に石炭留置所(現在は空)の周辺を一周することが出来ました。
1号機はすでに今年5月に廃止となっていますが、タービン建屋内の機器類はそのまま置かれており、案内の職員の方からは将来的には機器や建屋を撤去して更地にすることになるがそれが何時になるのかはわからないとお聞きしました。石炭留置所では、職員から石炭の自然発火を防ぐための温度管理を行うため、職員が石炭の山に直接登って専用の温度計を突き刺して行っていたとの説明があり、改めて石炭火力発電所の運営の大変さを実感しました。
GENESIS松島計画の準備に関しても案内の職員の方に聞いたところ、必要な資材のリストアップなど、工事を伴わずに出来ることは進めているとのことでしたが、今後については26年工事開始という予定以上のことは伝えられていないようでした。松島火力発電所はGENESIS松島計画の実施に備えて2号機も休止となっていますが、その影響で一部の人員は他の発電所に移動しているとのことで、休廃止の影響はすでに発電所の運営面に表れているようです。
この感謝デーはJ-Power主催のお祭りとして運営されているものです。会場である松島火力発電所は、その名の通り島に立地する発電所であり、西海市から船での移動が必須となるアクセス困難な立地です。また、西海市は過疎化が進む地域であり、人口減少も進んでいます。にも関わらず、感謝デー当日には地域の家族連れが大勢参加しており、発電所と地域との密接なつながりを感じ取れました。

所内に設置された出店や屋台を楽しむ人たち
西海市役所の担当者との面談

西海市市役所では新産業推進課と環境政策課の担当者の方々と主に2点、西海市江島沖の洋上風力発電事業の現状と、松島火力発電所の休廃止の影響とGENESIS松島計画の現状についてお話させていただきました。
江島沖の洋上風力発電事業については、スケジュール通りに進んでおり、現在は陸上工事についての地元への説明が行われているとのことでした。事業者からは三菱商事の撤退(2025年8月に事業の採算性が取れなくなったことを理由に3海域の大型洋上風力事業からの撤退を表明)に伴い不安も生じているが、しっかり進めているとの報告を受けており、市としては予定通り後押ししていくとのことです。また経済効果としては、工事期間中の関連産業への波及、作業員宿舎や資材搬入に伴う地域消費の増加などのほか、将来的には、風車の保守点検業務に伴う継続的な雇用創出や関連産業の育成により、地域経済の循環が拡大すること期待しているそうです。
松島火力発電所の休廃止の影響とGENESIS松島計画の現状については、西海市にとってJ-Powerの発電所は主要産業であり、地域としては切っても切り離せない存在であるとのお話でした。発電所が稼働している際の具体的な経済波及効果としては、市内の小売・宿泊・飲食事業者の利用や税収増等が挙げられました。一方、休廃止により、従業員数の減少、関連事業者の取引縮小、松島と本土側を結ぶ交通船の利用者の減少など、市として一定の影響が生じていると認識されているとのことでした。
訪問を振り返って
今回の訪問からは改めて松島火力発電所、そしてそれを運営するJ-Powerが西海市に深く根付いていることが感じ取れました。しかし、GENESIS松島計画の進捗や予定については発電所で働く職員や市役所にも状況が知らされておらず、判断がJ-Powerの本社や管轄官庁である経済産業省がある東京で独占的に行われているのが実態のようです。本来であればこれほど地域の将来に影響を与えるプロジェクトについては、より地域の参加が図られる形で計画が検討されるべきではないでしょうか。また私たちも今後、今回のような訪問や調査を重ねることで、松島火力とその周辺地域の理解をさらに深めていきたいと思います。
