J-Power社長、今秋にGENESIS松島計画の準備書手続きに入りたいと表明

2026年に工事開始を予定しているGENESIS松島計画ですが、工事開始までに、環境影響評価(環境アセスメント)の手続きを終える必要があります。GENESIS松島計画の環境影響評価は、これまでに「計画段階配慮書」(2021年9月)、「環境影響評価方法書」(2022年10月)の手続きが完了し、最後の「環境影響評価準備書(以下「準備書」)」の手続きを残すのみとなっています[下図]。

準備書手続きの時期について、J-Powerの菅野社長は2025年9月1日に「エネルギーフォーラム」に掲載されたインタビュー記事の中で、「当初の着工・運転開始予定に対しやや遅れ気味でしたが、急ピッチで検討を進め、今秋、環境アセスメントの最終段階となる準備書の手続きに入りたいと考えています」と述べています。

環境影響評価の最終段階である準備書の手続きでも、市民からの意見募集が実施されます。J-Powerによる環境影響評価への意見募集に意見を提出できるのは、これが最後のチャンスです。

2012 年以降、日本各地で多数の石炭火力発電所の建設が計画されました。気候変動対策が立ち遅れてしまうことに懸念を持つ市民、地域が声を上げたことで、いくつかの地域では、計画を中止することができました。市民一人ひとりが、化石燃料、特に石炭に依存しない脱炭素社会の実現を求める声をあげることにとても大きな意味があります。

図:GENESIS松島計画の環境アセスメントの進捗状況

長期脱炭素電源オークションへの入札も検討

なお、上記の記事の中で菅野社長は、「本計画は水素混焼率を10%以上としており、長期脱炭素電源オークションの類型に当てはまるため、その活用も検討した上で実現を目指します。最終的にはCCS(CO2回収・貯留)と組み合わせる構想であり、ENEOSと組んで西日本での貯留地点の調査を並行して進めています」とも述べています。

長期脱炭素電源オークションは、「脱炭素電源」への新規投資を促すための制度で、落札した電源には初期投資を回収するために最大20年間の固定費での収入(容量収入)が保証されます。「脱炭素電源」と銘打っていますが、実際は水素・アンモニア混焼やCCSの導入を後押しするもので、既存の火力発電設備の改修や、LNG火力の新設まで支援対象となっています。GENESIS松島計画は、将来的に水素混焼やCCSの導入を計画しているので、脱炭素電源オークションの支援対象に該当します。

この脱炭素電源オークションは、火力インフラの温存につながり、気候変動対策と逆行するため、環境団体などからは批判されている制度です。J-Powerは、環境影響評価の手続きと並行して、長期脱炭素電源オークションへの入札手続きを進めるものと考えられます。

GENESIS松島計画は、老朽化した非効率の石炭火力を延命させるだけでなく、水素混焼、CCSなども取り入れ、誤った気候変動対策である「ゼロエミッション火力」の見本市のような形で進められています。この計画を止められるかどうかが、日本の気候変動対策の今後を左右するとも言えそうです。

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