【ニュース】「西海市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)(素案)」に対するパブリックコメントが実施されています!
現在松島火力発電所が立地する西海市では「西海市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)(素案)」に対するパブリックコメントを実施しています。
パブリックコメント実施に関する西海市のWebページ:https://www.city.saikai.nagasaki.jp/soshiki/kankyo_seisaku/2/onndannkataisaku.html
「西海市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)(素案)」へのリンク:
https://www.city.saikai.nagasaki.jp/material/files/group/12/paburikkusoan.pdf
本ウェブサイトを運営する団体の一つである気候ネットワーク東京事務所では下記の意見を作成し、提出しました。
提出期限が2023年3月6日(月)と非常に迫っているのですが、ぜひ一人でも多くの松島火力発電所およびGENESIS松島計画の問題に関心を持つ方々にも意見を提出していただければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
「西海市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)(素案)」に対する意見
(気候ネットワーク東京事務所)
<該当箇所>
P.6 1.4.4 地域の産業の動向
P.22~31 3.1 温室効果ガス総排出量の現状~3.3 CO₂排出量の削減目標
P.36 4.1 再エネ(電力)ポテンシャル
P.37 4.2.1 将来の社会像(将来ビジョン)
P.83 コラム 市内事業者による脱炭素の取組 電源開発株式会社 松島火力発電所
<意見内容>
<趣旨>
西海市の地球温暖化対策実行計画(素案)の中には、市内に存在する松島火力発電所のCO₂排出について記載されておらず、削減計画にも反映されていません。西海市においてはこの点について明記した上で、2050年ゼロカーボンシティ宣言に整合し、その再エネポテンシャルを最大限活かした、日本の脱炭素社会への移行の成功例となるような計画を策定されることを求めます。
<本文>
現在西海市で稼働している電源開発株式会社松島火力発電所は年間約588万トン(2019年度)ものCO₂を排出しており、これは長崎県全体の主要排出部門(産業部門、業務その他部門、家庭部門、運輸部門)の合計である約563万トン(2019年度(速報値))を上回ります。また、電力配分後の自家消費分だけでも松島火力発電所は約35万6,000トンものCO₂を排出し、西海市全体のCO₂排出量の約1.6倍となります。このまま松島火力発電所が稼働し続ければ、西海市だけでなく、長崎県全体の再生可能エネルギーへの転換や省エネなどの努力を全て打ち消してしまいますし、日本全体の温室効果ガスの削減努力を損なうほどの規模の大きさです。
しかし現在の西海市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)(素案)(以下「実行計画案」)では上述の松島火力発電所からの膨大な量のCO₂排出に関しては全く記載がありません。一方で地域の主力産業としては記載しており(P.6)、市内事業者の取組としても紹介しています(P.83)。実際には松島火力発電所で発電された電力の大部分が市外に売電されているとしても、少なくとも発電事業によって排出されたCO2についての記載されるべきです。さもなければ実行計画案の他の箇所で記されたゼロカーボンシティ宣言や西海市再生可能エネルギー活用計画などの取組も、本当は西海市としては環境に配慮していないにもかかわらず、しているように見せかけるための取組、いわゆるグリーンウォッシュであるとの批判が避けられないものとなってしまいます。
また市内事業者の取組として紹介されている電源開発株式会社松島火力発電所のGENESIS松島計画(以下「本計画」)の記載(P.83)は、この計画の実施に伴いどの程度CO₂が削減されるのかが記されていません。事業者が本計画の環境アセスメントに際して作成した環境影響評価方法書に石炭ガス化設備の設置によって削減されるのは単位電力量当たりの二酸化炭素排出量の約10%に過ぎないことは記されていますので、少なくともそれは記載すべきです。また本計画において事業者が導入を計画している石炭の代替燃料であるバイオマスとアンモニアは、それぞれ問題を抱えています。バイオマスは入手先によっては生態系を破壊すること、アンモニアについても、製造において化石燃料を原料として用いる場合はそれを燃料として使用してもかえって排出は増える場合もあること、そしてそれらの輸送においてもCO₂が排出されることは記載すべきではないでしょうか。また事業者がこれらの代替エネルギー源と組み合わせるとしているCCUSについても貯留先の選定はこれからであり、その実現可能性が大いに危ぶまれるものです。本計画は、バイオマスやアンモニアの混焼、CCUSの実施についてはその時期が全く明らかになっておらず、日本全体の削減目標である2030年46%削減、2050年カーボンニュートラルを保証するものでも全く無いことも記載すべきです。
実行計画案にも記載されている世界の地球温暖化の影響と現状を踏まえれば、松島火力発電所のような膨大な量のCO₂を排出する石炭火力発電を使い続けることへの世界の国々からの批判の声は今後ますます強くなるでしょう。それはGENESIS松島計画のような短中期的な削減効果が限られ、長期的な削減もその実現可能が疑問視されていることから、実質的には石炭火力の延命策にすぎないと世界からは認識されている事業についても同様です。それらの批判を受けて松島火力発電所が停止、廃止を余儀なくされるのは十分想定される事態です。本質的な意味での西海市の地球温暖化対策や市の将来を考えるのであれば、西海市としては市民に対して松島火力発電所からのCO₂排出の現状について情報提供を行うべきであり、稼働停止、廃止を前提とした将来ビジョン(P.37)を提示すべきです。それによって生じる地域社会への影響を考えれば今からでも市民参加型での対話等を通じて、松島火力発電所が無い西海市の将来に備えるための移行計画の策定を始めることは不可欠であると考えます。
そのような移行計画の策定を考える上で、将来ビジョンのポイントとして例示されている①洋上風力の推進、②イノベーション創出、③ EVなどの普及・活用、④ 再エネ設備の建設・運営、⑤森林資源の活用、⑥環境・エネルギー教育(P.37)は重視すべきポイントとして賛同できます。ただ②のイノベーションの創出においては、それが化石燃料利用の削減や実質的な温室効果ガス排出の削減につながるものであるかを精査すべきです。また2030年(令和12)年度までに取り組むシナリオ(P.39)についてはぜひ目標値の引き上げや、より早期の実現を目指されるよう希望します。
西海市は非常に高い再エネポテンシャルを有している(P.36)自治体です。西海市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)の策定においては、西海市がその再エネポテンシャルを最大限活かした、日本の脱炭素社会への移行の成功例となるような計画を策定されることを期待します。
最後に、今回の意見募集については募集期間が参考資料も含めて95ページもある文書に対するものとして、一週間というのは短すぎるのではないでしょうか。関心を持つ者が時間をかけて内容を検討し、より適切な意見を送付するためにも、今後西海市において類似の意見募集を行われる際には、より長い募集期間を設定されるよう要望いたします。
以上